老紳士と。

diary

仕事帰り。21時くらいに大宮駅に停車したときに、老紳士が息を切らせて乗ってきた。いや、乗り込もうとしていた。発車ベルが鳴り響く中、ドアの横に立っていた俺に片足だけ車内に入れたまま話しかけてきた。

「これどこいくの?」

えーと。
乗っている電車は宇都宮線に間違いないのだが、行先は小金井だったか、宇都宮だったか覚えていない。俺は降りる駅からして、終着駅は意識する必要がないので。
ドアも閉まりそうだったので、とっさに「宇都宮ですよ」と答えてしまったが、紳士は「ありがとう」と言って乗り込んだ。そして発車した。

うーむ。
まぁ「宇都宮」と言って乗り込んできたのだから、おそらく方向は間違えていないだろう。とはいえ、もしこの電車が小金井行で、この紳士の目的地が小金井以降だったら申し訳ないなと思い、もう発車しちゃってはいるのだが
「失礼ですけど、どちらまでですか?」

と聞いてみた。
その結果、小金井行でも宇都宮行でも問題ないことが確認できたのでほっとした。

「じゃあこの電車で大丈夫ですよ」

と。

これに気をよくしたのか、話のが好きな性格なのかは分からないが、紳士は矢継ぎ早に話しかけてきた。
「あんたはどこまでなの?」

「仕事帰り?大変だね」

「東京まで行っているの?」

「東京はどの駅なの?」

とグイグイ来た。
軽く酔っていると思われたが、穏やかな口調で笑顔もナイスな老紳士だったので、いじっていた携帯をしまい、しばらく付き合うことにした。とくに嘘を言っても意味はないと思ったのでひとつひとつ、聞かれたことにシンプルに回答していった。
職場の場所について回答したときに、

「あの辺りはぼくの大学があってね、神楽坂なんだけど」

と言うもんだらか、思わず

「では、もしかして理科大ですか?」

と降りる駅の質問以降、俺から聞いた。

「そう!よくわかったね」

というもんだから、またしても思わず

「わたし、後輩ですよ、先輩」

と言ってしまったら、かなり驚いた表情で

「何年卒なの?」

「専攻は?学部は?」

とさっきよりすごい勢いでグイグイ来た。
これまた丁寧に答えていたのだけど、

「じゃあ北海道だね!」

「○○さん(教授名)だね!」

とかまぁ、知っている先生も出てくる出てくる。
そして、、

「あんた!名刺ちょうだい!」

「僕の携帯はね、、、」

と。

「これは縁だよ!こういう縁は大切にしなさい!!」

「今度12月にいろんな人が集まる会があるから、是非きなさい!絶対に来なさい!あなたの人生のためになるよ!」

と。
話の内容からして明らかに学部長クラスの人たちが多そうな感じ。

しかしながら、、、学部卒で大して大学と関わっていない自分が、おそらくそうそうたる首脳陣たちの会合(と思われる集まり))に行くというのはどうだろうか。想像でしかないけど、そんな方々の中では超ワカゾーの学会などとは超絶無縁の単なるサラリーマン。、、、さすがにないだろ。居場所もないわ。

と。その旨やんわりお断りモードだったのだけど、、、

「そんなの関係ないから!」

と、グイグイ来て結局携帯番号を交換した。裏は取れていないが、なんか悪い人のような気がしなかったから思わず。そして、俺の方が先に下車。大宮駅からはかなり短い時間のやり取りだったのだけど、なんか濃かったな。

帰ってから思ったんだけど、おそらくは俺の知っている教授陣たちよりもはるかに年上の感じだったし、その教授陣を下手(見下すのではなく親しみを持った部下のような感じ)に見るかのような発言。

すでにリタイアしたけども、相当偉い人だったんじゃないか。。。思えば、穏やかな口調といい、確かに理性が溢れていたような気がする。

名前聞くの忘れた!

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Posted by yachi